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ソニー中期説明会についての感想

感想なので肩肘張らない感じで。

この中期計画に関しては、平井社長二期目ではなく、吉田副社長一期目と言った方が適切なんじゃないかと思う。ソニーの決算ライブを定期的に聞いている人は1Qの時点でおやっ?と思った人多かったと思う。駄目なことを駄目といい、IRによる開示を拡大し、質問にも出来るだけ答える。ついにソニーが変わった瞬間だった。今回の質問でも平井社長の回答の後必ず吉田CFOが補足し、より詳細な回答をしていた。どちらが実務における実力者であるか明白だ。

今回の計画で象徴的なことは何かといえば、それは資本市場からはお荷物と散々罵られたエレキの縮小と社内のパワーゲームにおける力を失ったことだろう。
ソニーのエレキが利益重視というのはここ数年ずっと言って来た事だが、守られたことはほぼなかった。四半期ごとの決算のどこかのタイミングで、新興国での在庫増加とか採算の悪化といった言葉とともに下方修正がされた。しかし3Qの決算でTV事業での項目で、中南米における販売台数の大幅な減少という言葉が出た。利益追求の為に押し込みをやめた訳で、やっと方針に対して有限実行がされる段階になった。これはここ数年の中では見られなかったことだ。
それを行うには会社をスリム化する必要がある、売上減少が前提なら固定費の削減は絶対に必要だ。今回TVに続いて、それ以外のAV事業の分社化も発表されたが、これは売り上げ減前提の計画が本物である証左だろう。

こうして主役からの退場を命じられたエレキ事業だが、本社の温情も感じられる。それは2017年における営業利益率目標の低さ。下限でわずか2%であり、健全な製造業ならありえない低さだ。ハードルは低い(裏を返せば本社は全く期待していない)のだから、それすら越えられないなら、バラバラに解体されても文句をいうな、という三行半を突きつけられている。そこを悪く捉えて、テタイテタイというか、緩みきった社内に渇を入れたかを捉えるかは立場にとって異なるだろう。(吉田CFOはvaioの撤退による社内の引き締め効果を3Q決算説明会で半ば自賛していた。内情をうかがい知れる。)

今回の計画で一番ブレが怖いのはデバイスだろう。売上拡大がかなり急ピッチであり、利益率も高いままで据え置かれている。この分野を統括する鈴木智行氏については吉田CFOと並んでソニーウォッチをするなら常に注目したほうが良いだろう。

ゲームに関しては現行世代におけるPS4の成功は半ば確定している中としては利益率の目標が高くない。プラットホームの量的追求の言及も改めてされ、収益面を極端に重視されSCEの機動性が束縛されることはないだろう。競合他社にとっては悲報だろう。これは平井社長のいい面だが、musicunlimitedの撤退を見ても分かるとおり、現実に即した事業の最適化がやっと普通に行える環境が整いつつある。


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ここからはエレキに関する個人的な感想。

まずは平井社長の変化。去年のCESレポートを見れば分かるが、平井社長はエレキ部門のスピーカーとして社内の士気を鼓舞していた。厚木回りを繰り返し、その意義を強調していた。しかし最近はこの手の話はなくなった。社内として新規事業に関するテンプレートが出来てきたのもあるが、どこか一線を画するようにもなった気がする。一方でSCE社長として行って成功した、部門や地域ごとの特性を重視してある程度自由な采配を振るわせる(この変化がなければおそらくPS4の成功はありえなかっただろう)ことを選んだ。

これはストリンガー時代とは大きく異なることで、サイロを破壊する、またワンソニーという聞こえがいい官僚主義的な拡大主義と自前主義からの脱却であり、やっと現場の声が経営に反映されたといえる。ストリンガー氏のソニー社内における指導力は無きに等しかったことを考えると、このような時代錯誤な思考を継続したエレキ幹部の責任は重い。

ソニーのエレキ事業に関する評価は人それぞれだ。この分野、特にAV機器部門の潜在力を高く評価している人は経営陣の責任を追及することが多い。しかし個人的には果たしてそこまでのポテンシャルがあったのか?と思わざるを得ない。確かに画質や音質へのこだわりはあり、技術力もある。ただそれを製品としてUIを含めたパッケージングを行い製品を出荷する能力は常に低かったのではないかという疑問がある。そしてその部分が製品の競争力を左右するようになってから、ソニーのエレキの低迷は始まっている。

その傾向は近年も続いている。初代機はずっと品薄だったHMDでは画質とデザイン重視で必要以上に装着感を損ねた感は否めず、それもあって代を重ねるごとに売上もおそらく減少。ソニーらしい奇抜な製品と初期に評価されたレンズスタイルカメラも、データ通信のもっさりさであっという間に現実に引き戻された。その後のアップデートでそれなりに改善されたようだが、なぜ発売時にそれを行えなかったのか。PS4やXperia、高級デジカメといった製品群が一定の評価と実売台数を誇っているのは製品の根本部門でUXを損ねるような致命的な問題がすくなかったからだ。

vaioの尖ったモデルやクリエ、コクーン、ロケーションフリーなど今の製品群の先駆となった製品は多い。だが、それをパッケージングとして高い次元にまとめ、数量的にメガヒットに持ち込める技術的基盤があったかという点で、個人的にどうしても疑問に思うところが多い。

ユーザーとして見たときに今回のエレキ縮小がどういう影響をもたらすかといえば、それは映像や音質にこだわった製品群の購入価格の上昇だろう。今までの様に数を押し込むために販売奨励金を必要以上にばら撒き、高級機種が中級機種並の値段で実質買えることはなくなるだろうし、高級機種との差別化の為に中下位機種の搭載機能は意図的に制限されるだろう。充分以上の機能がちょっと贅沢という手ごろな価格で買えると言う消費者にとって幸せだった時代はおそらく終焉していくだろう。これは消費者として残念なことだが覚悟しなければならないだろう。

一方で苦言を呈したような製品群がある一方で、高いレベルで製品が纏まりUXとして結実している製品も出てきている。何より会社の方針としてそういう製品をつくっていこうという傾向を感じられるようになってきている。そうした製品を新味が足りないとこき下ろし、昔のソニーのようなイノベーションうんたらという評論家は、スペックだけではわからない必要以上にこだわりが内包された電気機器というカテゴリーが存続の危機に瀕している事実を、あまりにも過小評価しすぎではないだろうか。本当にパンがなければお菓子があるものといってられるのだろうか。一ファンとして疑問に思わざるを得ない。

こうした製品を出し続けまず、製品としてのソニーの信頼を回復すること。それを会社を縮小する中で確実に行うこと。それがエレキ、特にAV機器部門に与えられた今後3年間の最低限の命題なんじゃないかと思う。そしてユーザーがスペックだけでは分からない職人的な、高画質と高音質を求めているのかも明らかになるだろう。

個人的にはそこの部分のこだわりがUIやソフトウェア技術や製品の骨格部分の実装に低さに阻害されて必要以上に低評価を受け、そのまま製品全体が否定されるという、2000年代以降の日本のAV機器の悲しい歴史だけは、もう繰り返して欲しくないと切に願っている。

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